ウワバミソウ Elatostema umbellatum var.majus

イラクサ科 ウワバミソウ属
多年生草 花期:4−9月

山々が新緑につつまれるころに山沿いの湿地や沢側、湖の水辺などに、みずみずした芽茎を数本ときには十数本にしたように株立ちで群生しています。

蛇菜(ヘビナ)...!

 各地で古くから食用にされて桐生地方でもミズナと呼んで利用されてきました。私が植物に興味をもち始めたころのある日、老人からこのミズナのことを「それはヘビナじゃ。」と教えられました。

 昔、山地に住む人達や山仕事をする人々や山歩きをする人(山の幸=山菜、キノコ、薬草、鉱石など...を採取する人)には、ヘビは食料であり栄養剤であり、薬でもあったので、よく湿地でヘビを捕らえたそうです。またその湿地にはミズナが群生していて山菜として食用にしていたそうです。捕らえたヘビを食べ過ぎると成分が強いので身体に障害を起こしますが、その時にこのミズナ=ヘビナを食べるとたちどころに消化還元すると言われます。

この優れた消化力は特に根茎にあり、この根茎をすりつぶしたものをミズトロと呼び、麦飯やアワ、ヒエ、ソバなどと一緒に食べると消化不良など起こさないとして貴ばれてきました。

また、ヘビのように強い消化力をもつこのヘビナの、現在用いられている和名がウワバミソウと言うのも実に意を得た名前であると思います。クチナワジョウゴと呼ぶ別名があるとも聞いています。

このウワバミソウは雌雄異株の多年生草で、茎は柔らかくつやがあり斜上して赤みを帯びて上方は薄くなり、根茎は短く横にはいます。4月〜6月ころに高さ30センチから50センチくらいに伸びて、葉は斜長楕円形で縁に荒い鋸歯があり先端は長尾状です。

雄花は緑黄白色で、葉腋から1、2センチの柄先に散形花序に咲き、雌花は葉腋に無柄で球形に咲きます。秋になると節々が膨らみ、のちに倒伏してその節から切れて繁殖します。

この仲間に小形のヒメウワバミソウがありますが、これも食べられます。またウワバミソウを赤ミズと呼び、青ミズと呼ぶヤマトキホコリも食用にしています。このヤマトキホコリに似たトキホコリが私達の地方(関東地方)にあり、これも食用に出来ます。

<料理と性質>

このウワバミソウは生育に対して指向性がある以外に何の欠点も見あたらない優れた山菜で、料理は万能型、味わいは万人向きで、料理法を記しようがなく、指針として数種類を記してみましたがぜひ皆さん方の自慢料理でご家族の人達をびっくりさせて下さい。

汁物の実、吸物、玉子とじ、煮付け、煮びたし、きんぴら、天ぷら、佃煮、油炒め、香り寄せの油炒め、あえ物いろいろ、お浸し、マヨネーズ和え、酢の物など。

生のまま塩漬けにしてのちに塩抜きしてから、みそ漬け、卯の花漬け、甘酢漬け、粕漬け、しょうゆ漬け、そのほか香り寄せの漬物などいろいろ工夫して下さい。

このように優れた山菜でも、生育に対して弱点がありまた限界があります。いくら多年生草でも根こそぎ採取したり、あたり一面土の肌が見えるように取ってしまっては絶えてしまいますので、間引くように採取して、いつまでもこの優れた山菜を利用しようではありませんか。