タマブキ Petasites spp.

キク科 フキ属
落葉低木 花期:8−10月

 風もさわやかに山あいの苗代も若緑に映えるころ、山地の樹陰にタマブキが新芽を伸び立て、早起き者はもう大きな葉を茎元から広げています。近寄って見ると樹陰はまだ寒いのか綿毛が密生しています。

 このタマブキは中型の多年生草で、湿った土地や樹陰を好み一本または数本で生え集落を作り群生します。根茎は短く堅く、茎は直立して50センチから1メートル以上にもなります。茎の色は、褐紫色を帯びて上方に薄く緑色になりますが、褐紫色にならないものもあります。

 葉は野球のホームベースのような五角形状で葉柄のところがハート形に切れ込み、質は柔らかでやや厚く、裏面には綿毛が密生して白く見えます。葉柄は下部ほど長く上部にしたがって短くなり、やがて無柄状に葉も小さくなってその基部に卵球形の球芽がつきます。8月〜10月ころ、茎の上部に白色の頭花を円錐花序に咲かせます。

タ マブキはフキの仲間であり、食用部は若芽から、生長したものでも先端の柔らかい部分で、4月ころから高山では7月ごろまで摘めます。深い香りはフキに似て歯切れのよい山菜です。

 このタマブキは東北地方に生じるヨブスマソウの姉妹種で、私達の地方では、このヨブスマソウの代わりにこのタマブキが生じています。フキに似た深い香りはウドとミツバを混ぜ合わせたようでもあり、個性の強い山菜で、この個性こそがこの山菜の魅力です。

<料理と性質>

 タマブキはフキと同じく強いアクをもち、このアクをやわらげ抜き取るのが料理のコツです。

 摘み取ったものをすぐ料理する場合には、熱湯に酢と塩を少量入れてゆであげて、速やかに冷水でさらしアクをやわらげます。もう一法は、摘み取ったものに塩を軽くまぶして2、3時間重石をのせて漬けておき、のちに熱湯でゆであげ冷水でさらします。このように、したごしらえしたのちにいろいろの料理に作り上げると、実に風味豊かな味わいとなります。

  • お浸し
  • 酢みそ和え
  • ゴマ和え
  • ワサビとノリの切り和え
  • クルミ和え
  • ゴマみそ和え
  • カラシみそ和え
  • クルミみそ和え
  • ピーナツみそ和え
  • 煮付け、煮合せ
  • 油炒め、あんかけなど

*塩蔵法によるアク抜き*

 摘み取った山菜の5分の1くらいの塩で一度漬けます。重石は山菜の2倍くらいのものを用いて1週間くらい置いた後に、黒い水が上がっていますからその水を捨て山菜は水洗いして、また5分の1の塩であらためて漬け直します。こうすることによりアクが抜けて保存もでき、塩抜きして前記の料理に仕上げます。また塩抜きしたものにしょうゆ、ミリン、ゴマ、コンブなどで味付けして生のまま香の物とします。この香の物は、お茶漬けやおにぎり、おすしのしんに用いると実に美味で山菜の風格を十分発揮いたします。そのほか、みそ漬けになり、このみそをモロミみそ、キンザンジみそなどで漬け込むといろいろの味が楽しめます。皆さんもわが家の一品を作り出して下さい。