センブリ Swertia japonica

ツリガネニンジン Adenophora tripylla var.japonicaリンドウ科 センブリ属
2年草
花期:8ー11月

日本全土に分布し、日当りの良い草地や雑木林の開けた所などに生える1年生または越年草の草本です。
 昔から健胃、整腸薬として使われてきた代表的な民間薬で、今も観光地などで土産品と一緒に並べて売られています。市販品は、栃木、茨木、秋田、宮城、次いで群馬の各県の野生品を採取したもので栽培品はほとんどないといいます。

 センブリは、草丈 20-30cm前後と小さく、花もその草丈に似合わせて可憐に咲かせます。花は白花と淡紫色のものとがあり、白花のセンブリ (Swertia japonica MAKINO)と淡紫色のムラサキセンブリ(Swertia pseudochinensis NARA)で、両種とも強い苦味を持っており同じように薬用にされます。
 また、似たものに淡紫色の花を咲かせるイヌセンブリがありますが、これは苦味がないので薬用にされません。=(草の名にイヌがつくものは全て本物でなく偽物と言うくらいの蔑称です)=
 センブリの名前の由来は、苦味成分がお湯に千回も振り出しても苦味が出ることから命名されたといいます。

 桐生は鶴が舞う形をした群馬県の首の所に位置して、東に桐生川を隔てた栃木県側にある山がセンブリが沢山取れる所です。
 低い山の日当りの良い尾根筋の草丈の低い芝草地によく混生します。時には、雑木の伐採後地で日当りが良くなった所に大量に発生することがあり、草木が大きくなるに従って年々少なくなり数年で姿を消します。なぜ、このようなことが起きるのかと疑問が募ります。

 そこで、ある時、栽培を試みようと実験を行いました。

 以前、山ユリの栽培を試みたことがあり(自然地での増殖から〜最終にはカルス培養まで)、その中で、特に実感したことは自然地での育成でユリの球根(鱗片)の発芽に際し、イネ科植物の花粉が深く関与していました。センブリの栽培でも、山芝の仲間の花粉が非常に関わっているようでした。
 栽培地の土壌中での花粉の有無が育成の良否を定めているのではないかと思われます。花粉中に含有する物質が抗生物質的役割をはたし、また、芝根の細い無数の糸状根が極小なセンブリの種子の培養土条件を満たし、さらに水分の供給を行っているものと強く考察されます。山芝の仲間にセンブリと相性が合う特定のものがあるようで、互いに相関関係を密に保ちつつ生活層を形成しているのでしょう。これがセンブリの自然の世界のようです。

 センブリの薬効が発見されて、3千年とも4千年ともいわれる遠い太古の昔から、私たち祖先の健康を導いて、現在もなお変わることなく自然の中から私達の健康に寄与し続けていることは、非常に喜ばしい証です。

 自然の仕組みの深さを実感しつつ....。

 太古からの変わらぬ自然が今なお存続しています。センブリを通して見た自然界が、私達にとって自然破壊の妙薬で、また、地球上全ての生物の相互扶助の精神の秘薬であることを願いつつ...。