ミチヤナギ Plygonum aviculare

ミチヤナギ Plygonum aviculare(タデ科 タデ属)
1年草
花期:5-10月

 日本各地の道ばたや野原の日当りの良い所に普通に見られる1年草で、茎は円柱形で分枝して斜上あるいは直立して10〜40cmになり緑色で質はやや硬く、葉は短い間隔で互生し、葉腋の茎部が竹の節状に膨らみ紫色を帯びます。楕円形ないし長楕円形の葉は、先は鈍形、全縁、質は薄く軟らかく、小さい葉鞘は膜質で裂けています。5月〜10月にかけて葉腋に数個ずつ小さな花を付けます。
 ミチヤナギはニワヤナギとも呼ばれ、庭の日当りの良い所にもよく生えます。名前の由来は、葉がヤナギの葉に似ていることによると言われています。

 漢方では開花期の全草を乾燥したものを「扁蓄」または「扁竹」と呼び、扁竹(ヘンチク)は葉腋のところの茎部が竹の節のように膨らんでいることに由来すると言われています。

 ミチヤナギはタデ科の仲間で、このタデの仲間にオオケタデがあり、昔幼い頃のママゴトの代表的な材料で、花穂を摘み取り”赤飯”に見立て「オコワ(赤飯の桐生地方の方言)」と呼び、小さな食器に盛り、夢中で遊んだのを思い出します。
 その他に紺色の染料の原料である「アイ」、お刺身のツマに付ける赤芽は「ヤナギタデ」のモヤシで、夏の鮎料理の塩焼きを食べる時のつけ汁は「ホンタデ」の若葉をすりつぶして絞り出した汁です。さらに山菜の「イタドリ」、そしてお馴染みの「そば」もタデの仲間です。

 「タデ喰う虫も好き々々」と昔から俗諺されているように、皆強い個性をもっています。また「へんちくな奴」という方言もあり、これもタデの強い個性を表徴した俗諺ではないでしょうか。
 漢方で「扁竹」は利尿薬として黄疸、腎臓病などに使われ、民間では腹痛あるいは駆虫薬に使われてきました。
 されば...腹黒い...いや、腹中の悪い虫を追い出す良薬にして「変ちくな奴」の当薬とするならば、漢方のヘンチクの薬効が神秘な生物創始の神にて、古今絶え間なく続く強慾非道な族(やから)の腹中の黒い悪虫を駆虫する秘薬のできる植物を創生できぬものか、神に懇願する!

 私達の地方では、山地の少し開けた小さな沢沿いの空き地に、真夏の太陽がそこに集中するかのように燦々とそそぎミチヤナギを成育させています。そこには他の植物はほとんどなく、根方に丈の低い芝が生じています。今日では、普段、このミチヤナギを薬用に採取する人は見かけられず、生涯学習などの学習サークルの特定の人達が野外実習の時に説明を受けて採集する程度のようです。

 以前は市街地の空き地や庭の一角によく見られていましたが、生活環境の進展に伴い、身近な庭もブロックなどで整然と区画した花壇となり、人々は花壇の中に好みの草花を植えて賞でながらも、周りの草には農薬を散布し除草しています。時には、ミチヤナギも雑草として死滅させられて姿が見られなくなっています。これは現代生活の知恵でしょうか。 私は、昔から培われてきた尊い知識まで古い事として捨て去る昨今に疑心をもちます。多くの事柄を積み重ね保存し伝承する事の大事さと共に歩き、努力する者の一人であり続けたいと思います。