マタタビ Actinidia polygamaマタタビ科 マタタビ属 北海道・本州・四国・九州の山地に自生するつる性の落葉木本。長く伸びた茎は、他物にゆるく巻きつき細い枝を数多く出し、若い枝(新芽)には細かい毛があります。葉は互生し有柄、卵円形で先端は鋭尖、茎部は円形で辺縁にはきょ歯があります。葉の長さは約10cmで雌雄雑居性です。 夏の頃に枝先の葉腋に1〜3個梅の花に似た純白の単性花または両性花を咲かせ、花には芳香があります。この花が咲く時期になると、枝先の葉の表面が白く変色することが多くあり、遠方からでも目立つのでマタタビの所在がよくわかります。花が終り結実するころになると、白変した葉はいつしか消えてもとの緑に戻ります。 果実は3〜4cmの先のとがった長だ円形の液果で、表面は平滑です。青い実は強い辛味がありますが、熟して黄色くなると甘味が出て美味しく食べられます。果実の中に虫が入ったものは、虫えいができ表面がデコボコの塊状になります。これは蕾のころから開花直前に花の中心の子房にマタタビアブラムシ(Asphodylia
matatadi YUASA et KUMAZAWA)が卵を産みつけると子房は正常な発育ができず異常な塊状の果実となってしまうことによります。この虫コブ塊状の実を熱湯で処理して乾燥したものを漢方薬で「木天蓼」=モクテンリョウ=といい、虫コブにならない正常な果実には薬効はないといいます。 マタタビの芽摘み...「ばあちゃんがんばってねっ!春の新芽の萌え立ちのころに、山菜としてマタタビの芽摘みに出かけます。 小さな沢に沿って急な山道を登って行く。毎年この時期にこの場所に出向くが、今年は特に沢の水音が小さく聞こえ、沢風も肌に冷たく通り過ぎるように感じる。長男一家4人と年寄り2人の計6人の山行きです。昨年はこの長男の下の孫娘はほとんど歩かず背負って登ったが、今年は姉の孫娘に負けじとがむしゃらに歩む。子供の1年の成長が羨ましく目に映える。小学2年になった姉は、妻の手を引きながら「ばあちゃんがんばってねっ!」と促す。昨年とは正反対の行動です。空身で登る私であるが、何か今年は息が荒く感じ、ふと脳裏に歳をうかべる。昔、疲れきった旅人が、マタタビの実を食べて生気を取り戻し、意気洋々とまた旅を続けたという名の由来が次に続く。このようなマタタビの語源説により民間では昔から強精薬と伝えられてきたが、科学的根拠のない眉つばものと記した書物もある。しかし、強精作用はないにしても、春の息吹を胸一杯に満たしながら、沢沿いに旺盛に繁茂するマタタビのつる茎に萌え立つ新緑の若芽を見つけた瞬時より、心身共に壮快になる。これが私にとっては、マタタビの秘薬の所以であり、近代医学のプラシボー反応であり優れた薬草のひとつです。 「木天蓼」の薬効は、冷え症、利尿、強心、神経痛とされていますが、若芽のゴマ味噌和え、すりゴマを振りかけたお浸し、マヨネーズをまぶしたサラダなどなどは「木天蓼」と同様な効用と理解してわが家の大好物な季節の薬膳です。 深みの増した沢を塞ぐようにつる茎を無数に分枝してまとい付いた枝を引き寄せながら摘み取る新芽は、柔らかく茎元からたやすく手折れる。二人の孫娘の摘み取る手際は実に巧みになった。1時間もたたぬ内に全員の手提げ袋は満杯になる。 自然の幸とのふれ合いには、各々植物の個性を十分理解してのマナーがあります。例えば、沢沿いの森林の杉や桧などを育成管理する人からマタタビを見ると、あの旺盛につる茎を伸ばし大事な杉、桧などにまとい付きその成育を害してしまうので、ある時期に根元から切取り除かれてしまう。しかし私達のように薬草もしくわ山菜として扱うばあいは沢山繁茂することを願う。春一番の新芽(若芽)を1回だけ摘み取ることによって再度の発芽は、その数を増し繁茂する。この現象は盆栽や植木などを育てるとき、分枝の少ない徒長芽(枝)を切ることによって茎に密に新しい芽を出せるのと同様です。こんなところにも自然と触れ合い、自然活用の難しさをのぞかせる1点があります。 台風のおきみやげ...「木天蓼大収穫!」夏の台風シーズンもそろそろ終りを告げる頃、マタタビの実(木天蓼)の採取に行く。自然の恵みの収穫行は思いもよらぬハプニングに遭遇する。ある年は現地に着くと林道が整備され、沢沿いはコンクリートの要壁で完備され、草むしていた木出し場は大きく整地され公園の様子を呈していた。 今回は台風の影響で、沢深くに実った木天蓼が風で振り落とされて沢水に流され、下流の淵に留め寄せられていた。いつもの現地に行く半分の道程で持参した背負いカゴが満杯になった。台風の通過がマタタビの最適な熟度の時期であって、また金曜日であったため、日曜日の採取に好都合に組合わさった。昨年の3倍位の重さの背負いカゴも楽々と、自然に感謝しつつ林道を弾み下りる。 今年は最上の「木天酒」が沢山仕込める。お酒の飲めない方には木天蓼の梅酢漬けが良い。この酢漬けは少々若取りの木天蓼が最適で、お酒のおつまみや、おにぎりの具などにも合います。なお、正常に成育したマタタビの果実酒も美味な飲物です。 大事件!...「ネコにマタタビ」マタタビの成分マタタビラクトンは猫が好み、昔から猫の万病の薬と伝えられてきましたが、採取してきたものを縁先に置くといつしか近所の猫が現れ来る。実や茎を与えるとすさまじくジャレつき興奮する様子は見ていて唖然とする。 ペットショップへ行ったとき、小さな袋やぬいぐるみの中にマタタビの茎を細かく刻み入れた「猫ジャラシ」が売られていました。早速、手作りを試みて一大事件が発生する。 それと言うのは、近所の猫を自宅に寄せて子供と一緒にじゃらし遊んだ後、猫を帰し、ぬいぐるみに仕込んだ「猫ジャラシ」を子供のおもちゃ箱に仕舞い込んだ。翌日のこと。小雨の中隣家に出向く。つい話題に花が咲き些細な用事が2〜3時間の茶飲み話となる。帰宅すると様子が一変している。玄関前に警察官が1人立ってその脇に小学校6年の長男が青ざめて立っている。家の中にも警察の人が2人いる。驚いて尋ねると「泥棒が入ったとの通報で今調べている」と言う。今までこの近隣で空き巣に入られたことなど一度もなかったので、近所への小用では鍵など掛けたことなどなく過ごしていた。家の中に入って見るとタンスの上に置いた小箱や書類などが座敷中に散乱し、押し入れの襖も開けられ入れておいたおもちゃ箱がめちゃくちゃに荒されている。警察官も怪訝な様子で調べていた。私は散乱している中に昨日作ったいくつかの「猫ジャラシ」が千切られ、中のマタタビの木片が書類の上に散らかされているのを見た瞬間、これは近所の猫の仕業と直感し、「猫ジャラシ」の1件を警察官に説明した。警察官は安堵しながらも「それにしても犯人いや犯猫は1匹や2匹ではないぞ!」と驚く。事件は一件落着した。帰りに警察の人に苦労の謝意として無傷の「手作り猫ジャラシ」を記念におみやげ(証拠品)として差し上げた。通報した長男は警察官に頭を撫でてもらい、「ぼく、また何かあったらすぐ通報するのだよ。」との言葉で顔色が赤らみ、何か良いことをしたような気分の動作になっていた。 座敷の中を片付けながら、あの若い「猫好き」な警察官の自宅で手土産の証拠品による事件が発生しなければ良いものと懸念したのは、昭和45〜46年頃のことでした。 料理材料 マタタビの若芽
お茶
緑茶の作り方1
紅茶の作り方2
化粧水マタタビの茎から採取する樹液で、春の芽立ちの頃に根元の方より茎を切り、その切り口をビールビンの口に差入れ、口元に埃や雨水などが入らないように防具し、樹液を採取する。この採取法はヘチマの水を採取するのと同様である。 *採取した樹液の長期保存には、エチルアルコールを2〜4%添加し密封保存する。 浴湯剤茎、葉を使用するが、茎は1年中採取でき、葉は乾燥保存して用いる。注意しておきたいのは、猫の好物のため、保存に際しては特に気をつけること。 *このマタタビの浴湯でみがき上げたあなたに、彼氏・彼女が群がって来ると良いのですが、一度お試しあれ...。 |
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