クコ Lycium chinese

クコ Lycium chinese(ナス科 クコ属)
落葉低木

  • 花期:8〜10月
  • 生育地:深山・山里・街中
  • 生育期:新芽(4月)・開花(8月)・結実(9月)
  • 使用部位: 根・葉・実
  • 用途:   お茶・薬酒・薬用料理・浴湯
  • 効用: 強壮・安眠・解熱・消炎・肌をひきしめる

日本各地の温暖な低地に普通に見られる落葉性低木の帰化植物で、古くから中国では漢方薬に用いられています。

葉を”枸杞葉(クコヨウ)”と言い茶剤に、果実を”枸杞子 (クコシ)”と言い酒に浸して枸杞酒を作ります。これらは虚弱者の強壮薬に用います。根の皮部を乾燥したものを”地骨皮(ジコッピ)”と呼び、消炎、解熱、強壮に、また糖尿病などに用いられてきました。

今、自然指向による漢方処方の薬膳料理が私たちに理解され、各地で生涯学習の課目のひとつに加わり、日本流薬膳料理の達人・先生が教室を開いている今日この頃です。

小春日和の休日、実家の田んぼがある堀川の辺りまでクコの若菜(若葉)摘みに出かけます。無動作に手を出すと”チクリ”と刺し針に触れ、刺された指先をあわてて口にほうばって、辺りを見回わす。
 以前は、堀川の土手一面にブッシュのような林になって数百メートルも続いていたクコ。今は、区画整理で土場の堀川も大きなU字型のコンクリートで整備され、所々にコンクリートの橋も渡されて、クコのブッシュ林は生垣のように整然と美しく生えています。

 十数年前に整理された直後くらいから地元では、そのクコを誰も摘み取らなくなりました。クコはアブラムシの好物で、ある時期には茎が2〜3倍に太くなるようにびっしりと付きます。その頃には、農家は土手一面にたっぷり除草剤を散布し、田畑にも各種の農薬を撒きました。それで農薬の影響を嫌ってか(?) 若葉も秋のたわわに実る果実も収穫されずに放置され、深紅のクコの実は自然落下か、小鳥の餌か、いつのまにか枯れ木立の川辺となってごく最近まで続いていました。
 近頃、そこのクコの若葉を摘む農家の人を見かけるようになりました。

 世間では無農薬野菜が望まれていることから、その辺の田畑でも薬害に気付いた農家が無農薬野菜を栽培しているとのことで、私も若葉摘みに出かけたのです。 若葉は遠くから見ても健康そうに葉面がきらきらと輝いて、春の力強い息吹を演出しています。

 クコ摘みに連れて来た3才の孫娘も笑顔を満面にして低い小枝の先芽を摘みます。時折笑い声にまじえて「あっ! 痛たた...!」と叫んでは、また笑い声に変わります。本当に楽しそうです。陽射しが影をくっきりと一番小さくした頃に昼食にします。道はずれの堀り下った土手に滴り落ちる湧き水でクコの摘み葉を洗って、飯盒に用意してきた冷ごはんに湧き水をたっぷり注ぎます。幼い孫娘も始めから終わりまで足元を泥んこにして手伝います。

 飯盒を焚火に掛けてお粥を炊きます。煮え立ったころに細かく刻んだクコの葉を入れ、塩で味付けをします(本来は生米から炊き上げる)。このお粥が漢方の薬膳で、もっと薬効を願うなら枸杞子(クコの実の乾燥品)と茯苓(ブクリョウ)を加えるのですが、今日は孫の子守を兼ねたクコ摘みですが、心の内の目的は、小さな子供のうちにできるだけ自然の中を体験学習させることと自分の健康茶の原料の調達です。
 昼食もすみ、手カゴにめいっぱい摘み取った若葉と、食べ残ったお粥の入った飯盒を両手にぶら下げながら、楽しく騒ぐ孫の後ろ姿を見守りながら家路につきます。
 戻ってきた小さな自然を喜ぶと同時に、秋のクコの果実の豊作を願いながら、持って帰った飯盒の残りのお粥も添えた夕食の後、家族全員でクコ茶を作ります。

 得意に満ちたあどけない孫の仕草が楽しさを増します。