クサソテツ Matteuccia struthiopteris

オシダ科 クサソテツ属
花期:3−5月

春たけなわのころ、種々の摘み草や山菜取りに夢中で歩き回る足元に、クサソテツの若芽達が車座になり寒かった冬の話でもしているように、その姿はいかにも、コゴミ・コゴメという方言そのものです。 多年生のシダの仲間で、古くから東北地方で食用に利用されてきた代表的な山菜です。 普通は山麓や山中の林内、原野、竹林などの少し湿った地に、大小の集団をつくり群生し、時には平地の樹陰などに残生することがあります。

このクサソテツは、きわめて生育が旺盛で、くるくる巻いた若芽は数日で50センチから1メートルくらいに披針形に葉を広げてしまいす。

この生育したわか緑色の姿はすがすがしさを誘い、観賞価値も高く、時には、山草として庭園などの下草に利用しても立派なものです。 このクサソテツに似た仲間のミヤマシケシダと一般に若芽立のころでは見分けにくく、同一品種として扱われています。

このように若芽をくるくる巻いたシダの仲間には毒草がありませんので、安心して十分利用して下さい。 摘み取った後でも、巻き葉を伸ばして固くなりますから、すぐゆでるか多量に採取したときなどは、できるだけ早く塩蔵(塩漬け)して下さい。

* 料理と性質 *

このクサソテツは、またの名を「一夜コゴミ」と言います。背をコゴメて摘み出したら一気に取ってしまわないと、明日にはもう、丸まった新芽は背を伸ばして一番うまい時期を逸してしまうところから「一夜コゴミ」とも言われています。ワラビなどのように長い期間摘み取ることができないせいか、クサソテツの利用価値を知っている人はあまり多くないようです。この機会に十分理解して大いに利用して下さい。

ワラビやゼンマイのもつアク・ニガミがまったくなく、摘み取ってすぐゆでて花カツオを振りかけた浸しものなどは、ワラビと同じぬらめきがあり、鮮やかな緑はみた目にも美しいものです。このように優れた性質は万能型の料理材料です。皆さんもいろいろと工夫して新緑の春を楽しく味わって下さい。

また、少々伸びすぎた新芽で柔らかく手折る部分は、煮つけものや油炒めにするとけっこううまいものです。

 塩蔵したものは、塩出しを十分にしてから料理しますが、生品の様なぬらめきがなくなりますから種々のみそ和え、ジャガイモとの煮しめなどは、お惣菜向きです。