キンミズヒキ Agrimonia pilosa

キンミズヒキ Agrimonia pilosa(バラ科 キンミズヒキ属)
多年草
花期:7−10月

  1. 生育地:山里
  2. 生育期:新芽(4月)・開花(7−8月)・結実(8−9月)
  3. 使用部位:茎・葉・花・実
  4. 用途:お茶・浴湯
  5. 効用:健胃整腸・リュウマチ・神経痛・保温

原野に普通に見られる薬草です。
 山菜料理店を営むかたわら山野草の愛好者と連れ立って山里に出かけると、春の山地の香りは部屋の中にオゾンを放散したときの味がします。ゆるい沢沿いの坂道を歩を重ね、道端を登りながら山菜を求めてあたりを見回すと、先月来たときには枯草や岩欠けの小石で茶色を主にした足元が、見違えるほどに若緑色に染められています。その中に放射線状に地面に張り付くように萌え出たキンミズヒキが何株も並んでいます。
 この情景は春先に植えられたイチゴの苗畑のようです。キンミズヒキはイチゴと同じバラ科の植物で苗の頃は非常に似ていますが、生育が進むとキンミズヒキは中心部の茎がずんずん伸び立ち、7〜8月頃にその茎に金色の花を穂状に数多く咲かせます。この直立して伸びた茎咲きの様子が「金色の水引」を思わせることからキンミズヒキ”金水引”と命名されたといいます。

 日常「水引」はお祝い事に用いられ、敬意を表わす物に結ばれ、特に「金水引」は結婚式の品々によく使われています。また、漢方薬名「竜牙草」も同様です。竜は吉祥を願い空想に現わした動物で、この天空への使者の金色の牙に葉形を見立て=(花穂?)=命名されたと聞いています。どちらも本当にめでたい命名です。もし今日、名前を付けるとしたらどんな名前が命名されるでしょうか。

 キンミズヒキを採取するときに、皆に名前の由来や特徴を説明します。すると、皆の動作が穏やかになり、見る目が愛らしくなるのをたびたび実感しました。私たちが自然に愛の目を向けたことに対して、キンミズヒキは自然が私たちに敬意を表わして贈る価値ある宝物であると理解し、感謝します。またよくぞ素晴らしい名前を付けてくれたものだと。

 自然を主体に生活していた時代であればこそ、その利を細心に理解し得たのでしょう。よく「自然を愛する」と言われていますが、真に”愛”を理解しているのでしょうか。先日テレビで放映された岡本太郎氏の生前の一場面で、氏は小さな子供との対話で「人を愛するということは、愛する人と一心同体にひとつになることである。」と一心に端的に説明していました。氏は、「芸術は爆発だ。」と口癖に言います。この場面を観たとき、私の心も感動で爆発しました。自然を愛することは自然と一体化することであり、自然の事物万象をただ利用するのみではありません。

 愛をもって愛の探求を自然に求めて....