ヒナタノイノコズチ Achyranthes fauriei

ヒナタノイノコズチ Achyranthes fauriei(ヒユ科 イノコズチ属)
多年草
花期:8-9

 本州以南の原野や人里近くの空き地などに好んで生え、普通に見られる多年草です。同じ種類に山地の木陰や林の中などに生えるイノコズチ(A. japonica NARI)やヤナギイノコズチ(A. lungifolia MAKINO)があります。
草丈は40-100cm、茎は四角柱形でしばしば紅紫色を帯び、あらく分枝し枝は対生に節部は太く、葉は節に対生して楕円形、長さ5-10cmで先端は尖り全縁ですが少し縮れています。両面に短軟毛があり質はやや厚く光沢はありません。

7〜8月頃に茎頂や枝先に穂状に緑色の小さな花を開き、開花後、花の下にあった3つの包の2つが花の上方から外側に出てきます。この突き出た先はトゲのようになっていて、果実が熟すると、衣服や動物の毛などによく付着して種子の伝播を助けます。

 植物は人間生命の真の母体といわれ、人間の生命は植物に依存されています。植物以上に必要不可欠なものはありません。
 普段рスちの生活の中で一番なじみのある植物といえば八百屋さんに並ぶ野菜、庭や室内の草花などがあげられます。しかし、方向を変えて原野の名も知れぬ植物に目を止めてみましょう。そして細部まで気長に見翌ニしなく観察してゆくと、その植物には運動能力や知能があることに驚くでしょう。
 運動面では熟達した曲芸tとまったく同じように優雅にゆったりと身体を動かします。ただ、動物や人間と違うことは、大変ゆっくり、ゆっくりと行動することです。  知能と言えば、先ず根を観察しましょう。x根を地中に向け支摎ヘをつけ、細い糸状のもので絶えず穴を堀り進め、土壌中にしっかりと押し入り、土壌の養分を吟味し、シり気の多い土に向かい、埋蔵されている水脈の中に入り込みます。ある種のものはコンクリートも突き貫いて行くエネルギーを発揮します。穴掘り役の微細な根毛は特殊な細胞で、石、小石、大粒の砂と接触し摩損すると素早く取り替わりますが、燉{分に達すると根毛は死滅し無機塩を溶かします。同時に、溶かされて生じた成分を吸収するように設計された細胞の根毛が取って替わります。この基本的養分が細胞から細胞へと植物体内の上方に運ばれてゆきます。細胞を構成しているのは、それ自身で完全な原形質の単一体で、液状ないしはゼラチン状の物質です。この原形質が自然的生命の基礎と考えられるといいます。

 このようにして育成したヒナタノイノコズチを見ましょう。

 植物は動物や人間と異なり自分自身で行動する足がありません。そこで知能を発揮して、動物や人間の足で引越しをしてもらうのです。この引越しは内緒で無料でしてもらうため、必要なものを最小の一身上にまとめ、そして内緒ですので引越し屋に手伝いをしてもらえないので、ゥ分で引越し屋に渡す工夫をするのです。
 一身上を種子という形にまとめて入れて、包を工夫し、動物の毛や人間の衣服などに付着させて遠方に移動するのです。また、この引越し屋がどこを通過するのかを調査済みなのか、人里近くの日当りのよい路ばたなどに新居(成育地)を置くように計画されています。もしこの計画が失敗した場合は命(難 が断たれてしまうので、計画は非常uヌ密に組み立てられています。引越し屋に渡す種子の一粒には過汲ゥら現在までの生活の総ての情報が、そして未来で起きるであろう異変に対しての処置法まで納められ、受渡しに成功し、地上に落下した種子は親の全知全能を再生します。

普段、私たちが生活する中で路ばたに目にする植物を無知無能に見てしまいますが、理解を新たに今一度見てみましょう。

 茎が太く節状になっているところを猪(豚)の膝頭に見立て、日向に生じることから”日向の猪槌”と和名され、生薬名は漢名の字音で、牛の膝に似ていることに由来し、”牛膝(剤実)”といいます。

  • 薬用は根部で、夏に根を掘り取って、一度湯通しした後乾燥します。
  • 効用は、利尿、腰、脚関節の痛み、しびれ、水ぶくれ、中風に効果があり、通経、脚気などにも用いられます。
  • ] 漢方では、婦人の月経不調、悪血を治す要薬として処方に配合され、用量は1日あたり3-8g煎剤とします。

 このヒナタノイノコズチは、薬用として徳島、長野の両県から野生品が、奈良県からは栽培品が出荷されているといいます。